街中から「35億」のフレーズが響き渡り、店頭から忽然と姿を消したNintendo Switchを求めて長蛇の列ができた2017年。スマートフォンの普及が一段落し、SNSが単なる連絡ツールから「自己表現のステージ」へと完全にシフトしたこの年は、消費や流行のメカニズムそのものが根底から塗り替えられた歴史的な転換点でした。
「インスタ映え」が社会現象となり、手持ち無沙汰を解消するはずのハンドスピナーが世界中を席巻したあの熱狂から時間が経過しました。当時生まれたトレンドは一過性のあだ花だったのか、それとも現代カルチャーの礎となったのか。2017年を象徴するヒット商品や流行語の知られざる舞台裏と、ブームの主役たちが辿った「その後の軌跡」を徹底追跡します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:2017年は「インスタ映え」と「Nintendo Switch」が人々のライフスタイルと消費行動を決定づけたパラダイムシフトの年。
- 要点2:政治報道から生まれた「忖度」や新大久保を再興させた「チーズタッカルビ」など、可視化と共感を軸にした爆発的ヒットが連発。
- 要点3:ハンドスピナーやプレミアムフライデーなど、熱狂のピークを過ぎたトレンドも形を変えて現代の文化や働き方に深い影響を残している。
【2017年ヒット商品番付】Nintendo Switchとハンドスピナーが起こした革命
日経トレンディが発表した「2017年ヒット商品ベスト30」において、堂々の第1位に輝いたのが2017年3月3日に発売されたNintendo Switchでした。据え置き型ゲーム機でありながら自由に持ち出せるハイブリッド構造は、据え置きと携帯機の境界線を完全に消滅させました。
ローンチタイトルの『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が国内外で絶賛され、同年夏には『スプラトゥーン2』、秋には『スーパーマリオ オデッセイ』と強力なキラータイトルが隙間なく投下。家電量販店やネット通販では週末ごとに激しい争奪戦が繰り広げられ、抽選販売の当選倍率が数十倍に達することも珍しくありませんでした。ゲーム体験そのものを共有するプレイスタイルは、その後のゲーム業界の標準仕様となっています。
一方、トイ市場で予測不能な竜巻を巻き起こしたのがハンドスピナーです。ただ指先でベアリングを回転させるだけという極めてシンプルな玩具でありながら、YouTubeのプレイ動画をきっかけに小学生から大人まで瞬く間に拡散。2017年春から夏にかけては専門店に長蛇の列ができ、粗悪なコピー品が街角の露店にまで溢れかえる異様な光景を生み出しました。
「一瞬で消え去った一発屋」と記憶されがちなハンドスピナーブームの現在を追うと、意外な進化を遂げている事実に行き当たります。現在ではブーム時の低価格トイから脱却し、チタンやタングステンなど精密金属を用いた「大人のEDC(Everyday Carry:日常携行品)」や、リラクゼーション・集中力維持のためのギアとして確固たるニッチ市場を確立。医療・教育現場でも、手持ち無沙汰を解消して精神を落ち着かせるセンサリーツールとして今なお実用的に愛用され続けています。
【SNS消費の夜明け】「インスタ映え」と「チーズタッカルビ」が街を染めた理由
2017年の消費行動を語る上で避けて通れないのが、同年のユーキャン新語・流行語大賞で年間大賞を受賞した「インスタ映え」の存在です。2016年後半にInstagramへ導入された「ストーリーズ」機能が爆発的に定着したことで、若年層の情報収集インフラはGoogle検索(ググる)からハッシュタグ検索(タグる)へと劇的な地殻変動を起こしました。
この「写真や動画でいかに見栄えするか」という新基準の最大の恩恵を受けたのが、グルメ界の覇者となったチーズタッカルビです。甘辛く味付けされた鶏肉と野菜に、鉄板の中央で黄金色に溶けたチーズを絡め、高く持ち上げる瞬間——その圧倒的なシズル感は、スマホカメラで切り取られるために生まれたかのようなビジュアルインパクトを誇っていました。
当時、日韓関係の冷え込みにより客足が落ち込んでいた東京・新大久保のコリアンタウンは、チーズタッカルビを求める女子中高生や若いカップルで連日身動きが取れないほどの大混雑を記録。街の風景を一変させ、第3次韓流ブームの号砲を鳴らす決定的な原動力となったのです。
ビジュアル重視の波はカルチャー全般を席巻しました。アジア発のガールズグループTWICEが日本デビューを果たし、両手の親指と人差し指で泣き顔を表現する「TTポーズ」が大流行。プリクラや自撮りの定番ポーズとして女子中高生の間で義務教育レベルの広がりを見せ、SNS上で「真似して投稿する」こと自体が最強のエンタメとして機能し始めました。
【2017年流行語大賞一覧】「忖度」「35億」「ひふみん」が象徴した時代の空気
2017年の新語・流行語大賞は、ポップカルチャーの軽やかさと政治報道の重々しさが入り乱れる、極めてコントラストの強いラインナップとなりました。年間大賞を「インスタ映え」とともに分け合ったのが「忖度(そんたく)」です。
学校法人森友学園・加計学園を巡る一連の国会論戦の中で頻出したこの古風な言葉は、「他人の心情を推し量る」という本来の意味を超え、「権力者の意向を先回りして配慮する」という生々しいニュアンスを帯びてメディアを席巻。ファミリーマートが「忖度御膳」という攻めたネーミングの弁当を発売するなど、ブラックユーモアを交えた消費文化へと昇華されていきました。
エンタメ界の主役となったのは、キャリアウーマンネタで一世を風靡したブルゾンちえみでした。黒髪ボブに濃いメイク、両脇に後輩芸人「with B(ブリリアン)」を従え、オースティン・マホーンの楽曲『Dirty Work』に乗せて放つ「35億」「あと5000万人」の決め台詞は、老若男女を問わず日本中でコピーされました。媚びない強い女性像とキャッチーな音楽の融合は、時代の気分と完璧にシンクロしていました。
将棋界からは、同年6月に現役を引退した「ひふみん」こと加藤一二三九段がバラエティ番組に引っ張りだことなり、空前のひふみんブームが到来。抜けた前歯とユーモラスなマシンガントーク、対局中の数々の愛すべき伝説がSNSで親しまれる一方、デビュー直後から無敗の連勝記録を打ち立てた若干14歳の藤井聡太四段(当時)の29連勝という歴史的偉業と重なり合い、日本中が空前の将棋フィーバーに沸いた年でもありました。
【社会現象の裏側】『けものフレンズ』の奇跡と「プレミアムフライデー」の教訓
2017年初頭、アニメ業界に起きた最大の番狂わせがテレビアニメ『けものフレンズ』の社会現象化です。放送開始前は事前情報も少なく、CGの質感も相まって注目度は決して高くありませんでした。しかし、第1話放送後にSNS上で「すごーい!」「たーのしー!」といったフレンズたちの純粋無垢なセリフが「IQが溶ける癒やしアニメ」としてバイラル化します。
物語が進むにつれて散りばめられた不穏なポストアポカリプス的ディテールが考察クラスタの知的好奇心を刺激。「優しさに満ちた世界観」と「深遠なSFミステリー」のギャップに熱狂したファンが実在の動物園に大挙して押し寄せ、コラボレーション先の多摩動物公園や東武動物公園の来園者数が跳ね上がるなど、カルチャーが現実の経済を動かす鮮烈な実例となりました。
対照的な軌跡を辿ったのが、経済産業省と経団連が旗を振って2017年2月にスタートしたプレミアムフライデーです。「月末の金曜日は15時に退社し、買い物や旅行を楽しもう」という消費刺激策でしたが、多くの現場からは「月末金曜は最も業務が集中する時期」「非正規雇用の労働者には恩恵がない」といった反発や冷ややかな声が噴出しました。
制度自体は導入企業の少なさから次第に形骸化し、事実上のフェードアウトを余儀なくされました。しかし、この取り組みが投げかけた「労働時間を短縮し、余暇を創出する」という問題提起は、その後の働き方改革や有給休暇取得の義務化、そして近年の柔軟なリモートワーク環境を醸成するための重要な実験的ステップだったと再評価することもできます。
【2017年流行曲ランキング】音楽シーンの激変とYouTube・ストリーミング時代の胎動
音楽シーンにおいても、2017年はCD売上中心のビジネスモデルから、動画再生数や音楽ストリーミングサービスの再生数がヒットの主たる指標へと本格的に舵を切ったメモリアルな年でした。
前年末のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』のエンディングから火がついた星野源の『恋』は、年が明けても勢いが衰えず、「恋ダンス」の踊ってみた動画がYouTubeや文化祭で氾濫。メガヒットを記録しました。さらに映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の主題歌として制作されたDAOKO × 米津玄師の『打上花火』は、切ない夏の情景を描いたアニメーションMVが国境を越えて再生数を伸ばし、米津玄師が国民的アーティストへと登りつめる決定打となりました。
また、大阪府立登美丘高校ダンス部が大会で披露した「バブリーダンス」動画が世界的な話題を呼び、使用楽曲であった荻野目洋子の『ダンシング・ヒーロー』が32年の時を経てチャート上位に再浮上するというリバイバルヒットも発生。YouTube発のバイラル拡散が、埋もれていた過去の名曲すら一瞬で現代のアンセムへと蘇らせるパワーを証明しました。
【2017年ブーム詳細まとめ】カルチャーから食まで一挙振り返り年表
生活、エンタメ、ガジェットなど、あらゆる分野で新しい価値観が芽吹いた2017年。世間を賑わせた主なブームを振り返りのために整理しました。
- デジタル・ゲーム:Nintendo Switch発売、ドラゴンクエストXI発売、ハンドスピナー、VR元年からのアトラクション施設拡大
- グルメ・食文化:チーズタッカルビ、チョコミントスイーツブーム、ローストビーフ丼、高級食パン人気の萌芽
- エンタメ・カルチャー:『けものフレンズ』、ブルゾンちえみ with B、藤井聡太の29連勝、安室奈美恵が引退を発表(翌年9月引退)
- 音楽・動画:DAOKO × 米津玄師『打上花火』、星野源『恋』、TWICE日本デビュー、登美丘高校「バブリーダンス」
- 社会・ライフスタイル:インスタ映え、忖度、プレミアムフライデー導入、ほぼワンコインランチからプチ贅沢への二極化
【2017年に流行ったもの】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2017年の新語・流行語大賞で「年間大賞」に選ばれた2つの言葉は何ですか?
A1:「インスタ映え」と「忖度(そんたく)」の2語がダブル受賞を果たしました。視覚的な美しさをSNSで共有する若者文化の「インスタ映え」と、政界の不祥事報道から広まった大人の心理を突く「忖度」という、文化と社会世相の両極を反映した組み合わせとなりました。
Q2:爆発的ブームとなったハンドスピナーは、なぜ急速に姿を消したのですか?
A2:構造がシンプルすぎて誰でも安価に模倣品を製造できたため、市場に粗悪品が氾濫して急速に消費者の飽きを招いたことが主な要因です。また、学校への持ち込み禁止令が相次いだことも失速に拍車をかけました。しかし現在でも、集中力向上を目的とした大人向けの高品質ツールや医療的グッズとして根強く存続しています。
Q3:2017年に大ヒットした「チーズタッカルビ」は、なぜあそこまで若者に刺さったのですか?
A3:最大の理由は、鉄板の上でとろりと伸びるチーズの様子が「インスタ映え(特にストーリーズの短尺動画)」に完璧に合致した点です。ピリ辛のタッカルビをチーズでまろやかに食べる味の親しみやすさと、みんなで鉄板を囲むパーティー感が重なり、新大久保に若者を呼び戻す起爆剤となりました。
まとめ:2017年の熱狂が今の私たちに残したもの
2017年に起きたムーブメントを紐解くと、それは単なる懐かしい思い出の断片にとどまりません。掌の中のスマートフォンを起点に、誰もがコンテンツの発信者となり、共感とビジュアルが巨大な経済を動かす仕組みが完成した年でした。
Nintendo Switchが切り拓いたフレキシブルなエンタメ体験、Instagramが定着させた「視覚的な体験価値」の重視、そしてSNSを通じた草の根の熱狂が公式をも巻き込んでいくファンダムのあり方——2017年に生まれた数々のトレンドは、今の私たちの生活様式やデジタルカルチャーの土台として、姿を変えながらしっかりと受け継がれています。 (出典: 2017 年 流行っ た もの(Yahoo!ニュース))