荒木飛呂彦氏による人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険 第7部 スティール・ボール・ラン』(SBR)。シリーズ屈指の完成度を誇る本作において、連載開始当初に読者の度肝を抜いた最大の事件といえば、ウルムド・アブドゥルの電撃退場劇にほかなりません。第3部『スターダストクルセイダース』で圧倒的な存在感を放った仲間と同姓同名の強豪が登場したとあって、当時のファンのボルテージは最高潮に達していました。
ところが待っていたのは、レース開幕直後のまさかの即リタイア。2026年の現在に至るまで、読者の間で語り草となっているあの「瞬殺劇」には、一体どのような背景や作劇上の仕掛けがあったのでしょうか。第3部モハメド・アブドゥルとの相違点、スタンド能力の有無、そしてラクダ騎乗の理由まで、徹底的に深掘りします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:ウルムド・アブドゥルは第7部屈指の優勝候補として登場したものの、1st.STAGEの序盤でジャイロの仕掛けたサボテンの罠に落ち、開始早々にリタイアした。
- 要点2:第3部モハメド・アブドゥルとは異なるパラレル世界の別人で、スタンド能力は持たず、砂漠横断の経験とラクダの走破性を武器にしていた。
- 要点3:開幕直後のスピード脱落は、新主人公ジャイロ・ツェペリの持つ「鉄球の技術」の凄みと、レースの過酷さを読者に強烈に印象づけるための作劇だった。
【開幕即リタイアの衝撃】ウルムド・アブドゥルが脱落した理由とジャイロの罠
総額5千万ドルという莫大な賞金を懸け、北米大陸を横断する前代未聞の乗馬レース「スティール・ボール・ラン」。スタート地点に並んだ名だたる猛者たちのなかでも、ひときわ異彩を放っていたのがウルムド・アブドゥルでした。地元紙や観客の間でもジョジョの奇妙な冒険 第7部の優勝候補筆頭として名前が挙げられ、読者もまた「物語の中核を担う強キャラ」だと確信していました。
しかし、その期待はレース開始直後に脆くも崩れ去ります。アブドゥルは砂地におけるラクダの圧倒的なアドバンテージを活かし、先頭集団を猛追。トップを走るジャイロ・ツェペリの背後に肉薄し、プレッシャーをかけました。勝負を仕掛けた瞬間、ジャイロが放った「回転する鉄球」の風圧によって、コース脇に生えていた巨大なウチワサボテンが粉砕されます。
弾け飛んだ鋭いサボテンのトゲがラクダの敏感な鼻腔を直撃。激痛に狂乱したラクダはバランスを崩して激しく横転し、アブドゥルは猛スピードのまま地面へと叩きつけられました。頸椎などを痛める重傷を負い、立ち上がることすら叶わず、スティール・ボール・ランの1st.STAGEで最初の脱落者となってしまったのです。ファンが息をのむ暇すらない、文字通りの瞬殺劇でした。
【なぜラクダで参戦?】砂漠の王者が北米大陸横断に挑んだ勝算
馬によるレースが前提のなか、ウルムド・アブドゥルが愛機として選んだのは唯一無二の「ラクダ」でした。奇をてらった演出のようにも映りますが、彼の経歴と戦略を冷静に分析すると、極めて理に適った選択だったことが分かります。
アブドゥルはエジプト出身の冒険家であり、かつて単身でサハラ砂漠を横断した実績を持つタフガイです。馬とラクダの決定的な違いは、乾燥地帯における驚異的な持久力と水分保持能力にあります。馬は定期的な給水と休息を必要としますが、ラクダは数日間にわたって水を飲まずとも過酷な荒野を走破可能です。
広大な砂漠や荒涼とした不毛地帯を越えるSBRレースにおいて、「砂の上ならサラブレッド以上の速度を維持でき、長距離戦で圧倒的に優位に立てる」という確固たる勝算があったからこそのラクダ騎乗でした。序盤の平坦な砂地で見せた驚異的な追い上げは、その読みが正しかったことを十分に証明していました。敗因は戦略のミスではなく、ジャイロという未知の技術を持つ怪物とあまりに早い段階で激突してしまった点に尽きます。
【スタンド能力はあったのか?】第3部モハメドとの違いと元ネタ
多くの読者が抱いた疑問が、「ウルムド・アブドゥルにスタンド能力はあったのか」という点です。結論から言うと、ウルムド・アブドゥルはスタンド能力を一切持たない非能力者でした。
第3部に登場したモハメド・アブドゥルといえば、炎を操る鳥型スタンド「マジシャンズ・レッド(魔術師の赤)」の使い手として、承太郎たちの頼れる参謀役を務めた人気キャラクターです。一方、第7部のウルムド・アブドゥルは、生まれ持った強靭な肉体とラクダの操縦技術だけで勝負に挑んだ純粋なアスリートでした。
そもそも第7部の序盤は、スタンドという概念自体が読者にも伏せられており、技術や精神力を競い合うサスペンスフルなレース漫画として幕を開けています。名前の元ネタについては、第3部と同様にアメリカの有名ポップシンガーであるポーラ・アブドゥル(Paula Abdul)に由来していると考えられます。同じルーツを持ちながらも、一方は超能力バトルの重鎮、もう一方は生身の技術で挑んだチャレンジャーという、荒木飛呂彦氏らしい鮮烈な対比が描かれていました。
【ネットの反応と評価】「噛ませ犬」論争から伝説の愛され枠へ
連載当時のジャンプ本誌をリアルタイムで追っていた読者の衝撃は計り知れないものがありました。「あのモハメド・アブドゥルが帰ってきた!」と興奮したのも束の間、わずか数話で退場したため、当時の掲示板やSNSでは驚きと困惑の声が溢れかえりました。
「究極の出落ちキャラ」「最高の噛ませ犬」といった手厳しい声が上がった一方で、次第にファンの間では「これぞジョジョの緊張感」「誰が脱落するか分からないリアリティが最高」と、作品のハードボイルドな世界観を決定づけた立役者として高く評価されるようになっていきます。
特にジャイロの冷徹な勝負勘と「鉄球の回転」がもたらす物理的な破壊力を読者に分からせるための生贄として、前作の英雄的キャラクターのオマージュを惜しげもなく消費する荒木氏の豪胆なカタルシスは、今なおファンの語り草となっています。
【その後の消息】ウルムド・アブドゥルの再登場はあったのか?
首の骨を折るほどの重傷を負ってコース上に倒れ伏したアブドゥルですが、命を落としたわけではありません。リタイア後は大会の救護班によって搬送され、そのまま治療を受けることになりました。
一部の読者からは「物語の後半で再登場するのではないか」「遺体を集める旅のどこかで協力者になるのでは」といった期待も寄せられていましたが、残念ながらその後の本編でウルムド・アブドゥルが再登場することはありませんでした。
『スティール・ボール・ラン』は一度脱落した者に二度目のチャンスが巡ってくるほど甘い世界ではなく、彼の退場は「この過酷なレースを生き残れるのはごく一握りの覚悟ある者だけだ」というメッセージを物語全体に刻み込む役割を果たして幕を閉じました。
【スティール ボール ラン アブドゥル】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ウルムド・アブドゥルは死亡したのですか?
A1:死亡していません。サボテンのトゲで暴走したラクダから転落し、頸椎骨折などの重傷を負いましたが、命は助かりそのまま大会を棄権(リタイア)しました。
Q2:第3部のモハメド・アブドゥルと同一人物ですか?
A2:同一人物ではありません。第7部は第1部から第6部までの世界とは異なる一巡後のパラレルワールドであり、名前や外見のルーツを受け継いだ「別次元の別人」という位置づけです。
Q3:なぜ馬ではなくラクダで出場できたのですか?ルール違反ではないのですか?
A3:スティール・ボール・ランの公式ルールでは、参加車両や動力に関して「自立歩行する動物」であれば馬以外でも認められており、ラクダでの参戦は何ら違反ではありませんでした。アブドゥルは砂漠走破の利点を活かして正当な勝算を持って参戦していました。
まとめ:アブドゥルが切り拓いた『スティール・ボール・ラン』という新時代
『スティール・ボール・ラン』におけるウルムド・アブドゥルの存在は、単なる出落ちやギャグにとどまりません。過去シリーズの強力なキャラクターと同じ名前を持つ男をあえて第1ステージで容赦なく切り捨てることで、作者は読者に対し「これまでの常識は一切通用しない」という強烈な宣戦布告を行いました。
ジャイロ・ツェペリという新たな主人公の恐るべき力量を際立たせ、過酷極まる北米大陸横断レースの幕開けを華々しく飾ったウルムド・アブドゥル。彼の超スピード退場劇こそが、SBRを稀代の傑作へと押し上げた重要な推進力であったことは間違いありません。 (出典: スティール ボール ラン アブドゥル(Yahoo!ニュース))